真夜中の寝床

学院寄宿室j、畳50畳敷きのステージ付き大広間。

皆、それぞれの人生を秘めて、眠りこけている。

高校生、大学生、勤労少年、社会人、皆、眠りこけている。

世の中わからないものである。

教師、若いお巡りさん、修行僧がいる。早大生だっている。皆、悩んでる。

九州男児がいる。浪速っ子、栃木っペ、道産子がいる。皆、眠りこけている。

精神鍛錬、克己的修行、一日の鍛錬の日課を終えて、眠りこけている。

 

 

僕は、このひとときが好きだった。寝床の中でう〜んと伸びをすると、一日の疲れが尾を引いて何処かへ消えていく。もう夜更けのバイトも終わった。戦いすん、とにかく眠ろうと思った。

やっと心の中に充満してくる安堵感。

軽い寝息が聞こえる。誰かが寝返りを打っている。

「あいつ、寝相のわるい奴なんだ! よく跳ねる! そのくせ、よく寝てるンだよ。俺、感心するよ!」

フクロウさんが、呆れ返ったように言う。

深夜の大通りを行く車の音がする。離れた交差点の信号が窓を染めている。

 

 

不眠症のフクロウさんは、本当にフクロウのような人だ。

人が寝静まった寄宿室で、声を落とし、ヒソヒソと語り掛けてくる。

生い立ち、ふるさと、ともだち、思い出、人生を、人的温もりであたたかくくるんで話し掛けてくる。

温もりのこもった話は、絶えることなく、いつまでも、いつまでも続く。

夜はさらに更けて行く。

やがて僕に睡魔が襲ってくる。ウトウトしだすと、

「あれッ? もう、寝ちゃうの? もう少し話そうよ!」

と、無理な注文には、閉口した。

 

 

 

 

 

(画像はインターネットより拾いました。本文とは関係ありません)

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