『ムーンライト』

『ムーンライト』

 美しい映画。

スタイリッシュで青みがかった映像も繊細な精神性も…。

 劇中でこう言われる。ムーンライトに照らされると黒人は青く見える…と。

美しい表現である反面、月は陰を表す。

シャロン少年の生き方はまさに日陰者。

黒人で家庭は貧しく、母は麻薬常習者、自身は学校でいじめられっ子、その上ゲイとなれば今のアメリカ社会では弱者以外何ものでもない。

 映画は幼少期、学生時代、大人に成長した姿と3つの時代が描かれる。

選ばれた3つの時代には人生の転機となる決定的な出来事(むしろ儀式と呼ぶべきか)があるから。

繊細でひ弱だった少年の変遷には感情を揺さぶられる。

 日陰者であったシャロンに一瞬光が差しこむ…と思えた直後に覆されるショックは計り知れないだろう。

しかし、シャロンの辛い人生には少ないながらも理解者が登場する。

麻薬ディーラーのカップルは文字通り彼の両親のようで、海水浴シーンはさながら“父”から“洗礼”を受けているような図に見える。

これほど弱者の代弁者となれば、社会を相手に取った展開を期待してしまうが、映画はあくまでも普遍的な一個人として描き出す。

そこがこれまでの<この手>の映画と一線を画すところではないか。

 画面ごとに色彩調整を施されたというのもデジタル時代の恩恵だろう。

自分にブラックミュージック(オールディーズ)の造詣が深ければさらに感動したであろうポイントがあったことが悔やまれる。

 麻薬ディーラーのフアンを演じてオスカー受賞したマハーシャラ・アリや麻薬常習者の母を演じたナオミ・ハラスの熱演が際立つ。

余韻のある終わり方もアート的で良い。

 ところで作品賞ノミネートされた他の作品でNetflix独占配信している『最後の追跡』以外にも『フェンス』(助演女優賞受賞作)がソフトスルーになるみたい。

Amazonでは早くも予約開始している。(6月発売)

これまでは小規模でも劇場公開していたのにな…これも時代の流れか?

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