昭恵夫人は「いいね」が欲しい“意識高い系女子”か>

桜を見る会」で招待者に囲まれ、笑顔で記念写真に納まる安倍晋三首相と妻の昭恵氏=東京都内の新宿御苑で2017年4月15日、竹内紀臣撮影

社会・カルチャーメディア万華鏡

昭恵夫人は「いいね」が欲しい“意識高い系女子”か

2017年5月8日 山田道子 / 毎日新聞紙面審査委員

 八重桜が咲き乱れる東京・新宿御苑で4月15日、安倍晋三首相主催の「桜を見る会」が開かれた。この日は北朝鮮の故金日成主席生誕105周年ということで北朝鮮が核実験をするのではないかとの観測が流れていた。

 しかし、当日の関心は北朝鮮より、安倍首相より、ももいろクローバーZより、もえぎ色のドレスに身を包んだ首相夫人の昭恵氏だった。私も昭恵氏見たさで行った。安倍首相がスピーチをしたり、会場を回ったりしている間も「昭恵夫人はどこだ」「来るのもつらいだろうが、来なくてもいろいろ言われるだろうし……」という声が聞こえた。

桜を見る会」で来苑者とハイタッチする安倍昭恵氏=東京・新宿御苑で2017年4月15日、竹内紀臣撮影

桜を見る会」で来苑者とハイタッチする安倍昭恵氏=東京・新宿御苑で2017年4月15日、竹内紀臣撮影

 安倍首相と離れ、会場に集まった人々へのあいさつに回った昭恵氏には「頑張ってー」の嵐。首相主催の会で招待客がほとんどだからある意味当たり前。昭恵氏は涙で顔をくしゃくしゃにして握手に応じていた。

 今、東京はすっかり葉桜の季節。その間、閣僚の舌禍や北朝鮮“危機”で一時的にワイドショーでの扱いが小さくなった森友学園問題だが、学園の籠池泰典前理事長が4月28日、民進党の聞き取り調査で名前を何度も繰り返したことで昭恵氏に再びスポットライトが当たった。

 「桜を見る会」だけでなく、皇后さまの前で涙を流したことまで、これほど大量に多様に報じられたファーストレディーは初めてではないだろうか。

「スピリチュアルな傾向」との分析記事

 「こう来るか」と思った記事は、朝日新聞が4月6日朝刊に載せた「安倍昭恵氏の思想とは スピリチュアルへの関心 論壇も注目」だ。「スピリチュアル」は「霊的な」「超自然的な」といった意味がある。

 記事は昭恵氏について、「スピリチュアルへの傾斜と国粋的な傾向が共存しているように見える」として、「自然回帰は『日本の土着』を重視する姿勢と紙一重で、そこに左翼が国粋的な日本主義に接続する素地が生まれた」という中島岳志東京工業大教授の分析などを紹介している。

安倍昭恵氏=2017年4月13日(代表撮影)

安倍昭恵氏=2017年4月13日(代表撮影)

 私は、昭恵氏は、根は安倍首相と同じような保守であり、一見厳しいことは言っても支える「家庭内与党」とみていた。「脱原発」「巨大防潮堤建設反対」もリベラルな思想から主張したのではなく、日本の国土や自然を傷付けることを疎んじる国粋主義的な思想からきていると思っていた。東京電力福島第1原発事故の後に、反原発を訴えた一部の右翼や国粋主義者の発想と同じである。

 文芸春秋は3月号に続き5月号で「昭恵夫人『頭の中身』を解剖する」を掲載した。朝日新聞にも登場した中島教授、3月号で昭恵氏にインタビューしたノンフィクション作家の石井妙子氏、若手文筆家の古谷経衡氏が鼎談した。

 ここで古谷さんは昭恵氏を、他者に認めてもらいたい承認欲求が強い「意識高い系」と指摘。特徴は「具体論は一切言わない。そして自分は常に笑顔と言う。彼女は、学歴コンプレックスがあると公言しています。典型的な『意識高い系』にあてはまる」と。

フェイスブックが昭恵氏を追い立てた?

安倍昭恵氏のフェイスブックより

安倍昭恵氏のフェイスブックより

 そして、「彼女がFB(フェイスブック)を使うのは、圧倒的に称賛の多い媒体だからです。昭恵さんがイベントへの参加報告をしただけで、2000件、3000件の『いいね』ボタンが即座に押される。『批判にもきちんと耳を傾けます』『意見が違う人ともわかりあえる』とはいえ、前提としてはなれ合いのSNS」とも古谷さんは語っている。

 コンプレックスがある昭恵氏は「いいね」が欲しくてさまざまな活動に手を広げたりのめり込んだりした。というか、フェイスブックというSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が昭恵氏を追い立てたのではないだろうか。

 一般紙や月刊誌に思想や頭の中をここまで分析されたファーストレディーも、SNSを使い倒したファーストレディーも初めてだろう。その結果、昭恵氏は今や安倍首相の足を引っ張る本当の「家庭内野党」になってしまった。

ロシアに向けて出発する安倍晋三首相と妻の昭恵氏=2017年4月27日、和田大典撮影

ロシアに向けて出発する安倍晋三首相と妻の昭恵氏=2017年4月27日、和田大典撮影

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山田道子

山田道子

毎日新聞紙面審査委員

1961年東京都生まれ。85年毎日新聞入社。浦和支局(現さいたま支局)を経て社会部、政治部、川崎支局長など。2008年に総合週刊誌では日本で一番歴史のあるサンデー毎日の編集長に就任。総合週刊誌では初の女性編集長を3年半務めた。その後、夕刊編集部長、世論調査室長を経て15年5月から現職。

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https://mainichi.jp/premier/business/articles/20170501/biz/00m/010/036000c?inb=ys