あれは何だろう(ポエムNO.2-98)

心細くておーいと叫ぶと

向こうもおーいと叫ぶ。

一枚のセピア色の写真の中で

ビアホール「パラダイス」の椅子の背後で

通り過ぎた野良猫のちぎれた耳のあたりで。

叫びとともに

いろいろなものがUターンしてくる。

バッカスという名の名馬

腰のほそい夕顔美女のまつ毛

朔太郎がかき鳴らしたマンドリン

・・・おーい

ぼくはずいぶん以前に撮影した一枚の写真に対して叫ぶ。

「聞こえたら 返事してくれ」と。

二次元の世界にも奥行がある。

空間ではなく 時間の奥行が・・・。

ぼくやきみの胸の底にたまった

真っ黒い泥水。

フナやドジョウがぴよん ぴよん跳ねている。

フナやドジョウのように見えるもの

あれは本当は何だろう

あれは あれは本当は何だろう?

窓辺に置いた鉢植えのサボテンが

逃げだしたはずの悪夢のようにチクチク痛むんだ

つらいなあ つらい。

ぼくはぼくから逃げだすことなんてできないのだから。